神さまは乗り越えられない試練も・・・時々与える

妻の「鬱」から「統合失調症」〜精神科入院への道のり

妻の二度童子・・・無邪気な笑顔と喪失感

東北では還暦を迎えた人をこう呼びます

 

歳をとって再び子供にかえるという意味合いでしょう

 

認知症になった方にもよく使われる言葉ですが、精神疾患になった妻もまさしく

この言葉が当てはまります

 

日常の生活から解放され、病院で朝起きて食事をとり就寝する

 

生活の細々した事は考える事がなくなり穏やかな生活を取り戻します

 

薬の効果もあるのでしようが、面会に行くと走って面会場所の部屋に入ってきます

 

まるで今までの混乱など自分とは無関係の様に、楽しそうに満遍の笑みで私に話しかけてくれます

 

「それでね、あれでね」と話しは終わる事がありません

 

結局、話しの内容は自分が見た夢の話しで

夢で見た話しを現実と思い込んで一生懸命話すのです

 

もちろん、夢の中の話しなので話しの展開はつじつまが合ってなく、

楽しい状況から急に表情がくもり、地獄の様な展開になるのです

 

「明日、私はある島に連れてかれる  警察も来た、みんなが悪口を言っている」

 

その話しが終わる前にいきなり話しが変わり

「同じ病室の人が面白くって!」

 

といきなり笑い出す・・・

 

患者は携帯電話は取り上げられてる為、公衆電話で外部に電話をかけてきます

 

私の携帯には「コウシユウ」

という着信が毎日入り

 

何てことない病院の話しから

 

「明日逮捕されるから今から来て!」

と泣きながらの電話も入る

 

精神疾患は先の見えない病気・・・

 

この現実自体が私の夢だったらと思う長く暗く終わりのない悲しみが続きます

 

 

精神科の独特のルール(その1)

妻の精神錯乱、自傷行為から1ヶ月

やっと精神科の予約が取れ病院に行く事に

 

まずは個室で先生と助手の?先生からカウンセリングを受ける

 

先生は色々と本人に質問をするが、本人が正常でないものだから

受け答えもままならない

代わりに私が答えようとすると・・・

先生は

「本人の言葉で言わせて下さい」と一言

 

一通りカウンセリングが終わると先生は

「入院しましょう、一緒に治しましょう」と言ってくれた

 

しかし当の本人は自分がおかしいとは全く思ってない為、断固拒否

「私帰る」と席を立とうとする

 

先生は

「本人の意思で入院するのがベストですが、最悪家族の了承があれば強制入院も可能です」と

 

一度、廊下に連れ出し説得作業に入る

 

「嫌になったらすぐに連れて帰るから・・・」

と半ば強引に入院手続きを済ませる

 

入院の施設棟に移り色々な誓約書にサインをし

本人は下を向いたまま

 

携帯電話から何から何まで本人から取り上げ

下着やタオルなど、家族が準備するものをリストにされて渡される

 

そして今日から即入院

 

病室は2階だが、家族も行く事は許されない

テレビのあるロビーに患者は集まり食事もここで取るとの事

 

いつまでも家族がここにいると、本人が病室に行かないからと言われ

妻を置いて病院を後にする

 

振り返ると、妻は呆然とロビーに佇んでいた・・・

 

行き場の分からない焦燥感

自傷行為が始まったらもう、家族の手にはおえない

「入院」という監視を付けるしか方法はないのだ

 

一旦、家に連れて帰り傷口を消毒し包帯で手当てを行う

妻は「痛かったぁ・・・」とあっけらかんと言うのがますます私の胸を苦しくする

 

どうすればいいのか

どこに助けを求めればいいのか

 

そんな簡単な答えも見出せないまま途方にくれる

 

すがる思いで以前のクリニックに連れて行くも

先生は迷惑そうに「ですから、うちでは何も出来ません」

と精神科のリストを私に一枚よこし、ここから選んで治療して下さいと

 

「でも紹介状とか必要ないんですか?」と聞くと

 

「それはその病院による」と一言

 

一刻を争う焦りにパニックとなる私はその病院の駐車場からリストにある精神科に電話をする

 

「無駄な時間使わせやがって・・・」

自分の無知を棚に上げて苛つく

 

意味のない診療をするのに数時間待たされた挙句「うちでは無理です」

と診察は3分で終了

結局、半日そこで無駄な時間を使い他の病院に行く時間は無い

 

リストにある精神科の病院に電話をする私

 

落ち着いて、状況を詳細に説明すると

 

「診察の予約は入れられますが、非常に混んでおり一週間後になる」と

そして得意の「紹介状」も要求された

 

この業種の常識なのか私は分からないが、その病院で手に負えない患者がいても紹介状は依頼しないと書いてはくれないものなのか?

 

そしてまた最初の病院に行き、紹介状を書いてもらう様お願いした・・・

 

私が興奮気味で心象が悪かったのか、病院とはそういうものなのかわからないが

今すぐ命に関わる訳ではない「精神病」は病院もあまり親身にはなってくれないものか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

愛する人が体を切り刻む地獄の光景

無知とは不幸なもので、対応してくれる病院を探す事も出来ないまま自然治癒を期待して在宅看護

 

私も仕事をしなくてはいけない為、母親に来てもらい面倒を見てもらう

 

母親の世代は「鬱」など理解出来ない様で、普通の人間と同じ扱いをする

「鬱」なんてただの怠け者、だらしない!しっかりしろ!」と本人を蔑む・・・

 

周りの警戒心や視線が気になるなら・・・と気分転換に実家に預ける事にしたのが大きな間違いだった

 

これでとりあえず私も新しい仕事に集中出来る・・・はずだったが

 

毎日、私は夜実家に電話をして容態を確認していた

義母も「大丈夫、大丈夫、何ともないよ」

 

私も安心しきっていた

 

ひと山越えた

 

一週間ぶりに妻の実家に行く前日、妻からのメール

「今すぐ来て、もうダメだよ」

私は

「今すぐはむりだよ、明日早い時間にいくから」

「やっぱりいいや・・・」

 

翌日の朝、実家に向かう前に義母に連絡

「今から出ますんで」

 

義母も

「今日は気分がいいみたいでもう2時間もふろに入ってるよ」

と笑っている

 

娘を連れて実家に到着

 

「まだふろに入ってるんだよね〜」

 

おかしい・・・

 

私はふろに行き、鍵を開けて中に入ると・・・

真っ赤な浴槽に妻の姿、包丁が二つ浴室に転がり、首から手首から切り刻んだ妻が

「たっちゃん、死ねない・・・」

と浴槽に浸かっている

 

幸い、痛みからかあまり深くは傷つけてない様子だった

 

無理矢理浴室から引きずり出し、包丁を取り上げる

 

その光景を見ていた娘はあまりのショックで呼吸を震わせながら涙を流す・・・

この世の果てを感じる瞬間

とにかく病院に連れて行かなくてはならない。

 

妻の場合、アルコール依存が原因で鬱になったのか鬱が原因でアルコール依存になったのか・・・一体どちらが原因なのかが分からないのだから病院は何科??

 

とにかく、精神科に連れて行こうとネットで調べて評判の良いメンタルクリニックへと本にをダマしダマし連れて行くも、既に廃人の様になった妻を先生に相談しても

 

「これはもうクリニックというレベルではない。精神科に連れて行って下さい。」

血液検査をした結果、アルコールの多量摂取により肝臓の数値が異常との事で

「内科に行った方が?」

など、一体どうしていいのか分からない・・・

 

言われるまま、翌日内科に連れて行き肝臓の検査。

「数値は悪いが、飲まなきゃ正常になる。それより心療内科に行った方が良いのでは・・・」

 

とたらい回しとなり、大きな精神科のある総合病院に行く事に。

 

しかし、大きな病院は「紹介状」が無ければ予約も取れない。

 

よく考えれば当たり前の事だが、藁にもすがる思いで色々な病院を彷徨い続ける私。

 

日本の病院とはこういうシステムなのだ。

 

そうこうしてる間にも、日増しに狂ってくる妻。

 

仕事は続けられるはずも無く前職は会社から遠回しに追い出されたものの、仕事は探さなくてはならない。

 

やむなく、妻の母に助けを求め自宅に来て面倒を見てもらう事に・・・

 

妻の視覚・聴覚は尋常ではなくなった。

 

「たっちゃん(私)は分からないかもしれないけど、近所の人はみんな知っている。うちがゴミ屋敷だって事も、私が酷い所にこれから連れてかれる事も」

 

妻は外を気にして一日中部屋の窓をカーテンの隙間から除いている。

 

遠くに行ってしまった妻はもうどうにも出来ない。

私はこの世の果てを感じる様な、深い悲しみで呼吸すら苦しくなる。

 

人は超えられない現実を与えられると、現在を放棄するのかもしれない。

 

闇の組織??に狙われ始めた妻・・・そして私は退職

人はある日突然、壊れる。

 

「怪しい男2人組が家の周りをウロついている、たまに家の中にも入ってきている」

と真顔で言う妻。

 

壊れたのはある日突然ではあるが「原因」はあるのだ。

 

子供の学費の工面から家の事は何から何まで妻にお任せ。

金の事で頭を悩めたくない私は、家計の事はあえての「見て見ぬふり」・・・

 

家計を任せる=責任を逃れるという技で妻の頭の中を「金、金、金の支払い」

一色にし、逃げ道を塞いだ上で一気にパンクさせた

 

そして私は「言葉」で妻を殺したのだ。

 

妻の真面目に話す「被害誇大妄想」はまるで子供に帰った様に無邪気で真剣な戯言だ

 

妻の手を握りしめ、私も泣きながら妻の話しを聞く。

妻は涙一つ流さず、妻の中だけの非常事態を私に話す。

 

「まずは病院にいこう」

と言っても妻は正常な状態と信じて疑わない

 

騙し騙しメンタルクリニックにつれて行く事には成功した・・・

神様は乗り越えられない試練も・・・与える

妻のアルコール依存の放置から数年経ち、ついに2018年2月26日

全てが崩壊・・・

 

この日、職場に着いたばかりの私に妻からの電話。

「大変な事になった。もう取り返しがつかない、、家に入ってくる・・・」

支離滅裂の妻の言葉から始まった。

 

地獄の釜が開く日、妻の人格はこの世に存在しなくなった。

 

そして現在、精神科に入院する妻への懺悔の意を込めてこれを始めます。

 

「神様は乗り越えられない試練は与えない」という言葉は耳にするが

それはどうやら違う様だ。

 

妻は乗り越えられない程の試練を与えられた。

 

壊れて何処かへ行ってしまったんですから・・・